しあわせの雨傘  LNTプロデュース

作 ピエール・バリエ & ジャン₌ピエール・グッディ
翻訳 佐藤 康  演出 鵜山 仁

2018_08_22



シュザンヌ(ピジョル婦人)賀来千香子

ロベール・ピジョル(シュザンヌの夫)井上純一

モーリス。ババン(市長)永島敏行

ナディージュ(ロベールの秘書)遠野 なぎこ

1807-2


フランスには大人のコメディが豊富にありますが、その中の隠れた一作が、バリエ&グレディの「Potiche ポティッシュ」でした。
 1980年にパリで上演され、物語は70年代後半、地方の傘製造会社の社長夫人の変貌をコミカルに描いています。
作品は「社会の中に自分の居場所を探す女性」を描いています。
作品は70年代の世情ですが、現在も変わらない、女性と社会の関係がそこにはあります。 時代が変わっても、関係が変わらない状況は日本でも全く変わりはありません。
この作品は多くの女性、そして女性を対等なパートナーと考える男性に是非ご覧頂きたいと願っています。しかし、あくまでもコメディです。笑いの中の批判をお楽しみ下さい。

 演出は文学座のというより現在の日本演劇を牽引する演出家の一人、鵜山仁氏。
 70年代の空気の中で、現在を描こうという意欲で演出に取り組みます。
コメディの演出の場合でも、鵜山氏の大胆な切り口が、この作品を一段と見応えある作品に仕上るのは必至です。
 そして、“飾り壺”と思われている社長夫人は、賀来千香子。従順な妻であり家庭を大事にする母、しかし隠れた実力と知られざるアバンチュールを秘めた女性。
賀来千香子の存在そのままがシュザンヌ像といえます。可愛いだけではない、優れた女性を、物語の展開で見せていくことが、この作品のみどころであり、痛快なところです。
 無骨な労働者出身の共産党市長は、永島敏行。独善的な社長である夫は、役柄の幅を広げてきている井上純一。
社長の愛人なのに、シュザンヌの経営手腕に魅かれて行く秘書は、遠野なぎこ。
他も適材適所のキャスティングです。

kannkei

ストーリー
 とある町の、大きな傘工場の経営者夫人シュザンヌは、メイドもいる専業主婦。子育ても終わり、ポエムづくりとジョギングが日課。
家事も仕事もしなくて良い、と夫に言われる“お飾りの妻”となっていました。
しかし彼女は“お飾り”ではなく、素晴らしい実力を持った女性だったのです。
 シュザンヌは子育ても終わり、優雅な日々を送るが、退屈な日々を送っている社長夫人である。
社会の中に自分の居場所はなく、家庭でも母としての位置は、愛されるママでしかない。
 夫のロベールは仕事最優先、シュザンヌの事など見向きもしない。
彼は、秘書のナデージュを愛人にしていた。娘のジョエルは結婚し、夫を父の傘工場に勤めさせている。
息子のローランは、会社の後継者になるつもりは全くなくパリ暮らし。
しかし、びっくりするニュースを持って実家に帰ってきた。
 そんな時、独善的で典型的なブルジョア社長ロベールに反発する労働者が、横暴な経営を改善しろ、とストライキに入ってしまう。
ロベールは、事態を収拾するどころか、悪化させ工場に軟禁状態になってしまう。
 この窮地をシュザンヌは、若い頃には交流のあった、今は共産党員の市長であるババンに、助けて貰おうと相談する。ババンの協力もあり、創業者の娘としてシュザンヌは組合との交渉に成功する。
そして夫は軟禁から解放されるが心臓発作を起こしてしまう。夫のロベールに代わり、彼女シュザンヌが社長に就任するが・・・。


感想
賀来千香子がきれいだった。
声がちょっと聞き取りにくかったけど、目は楽しめました。
飾り壺のような存在の奥様が、労働運動によって夫に代わって社長になったのは面白かったのですが、
ちょっとずっとずれているところもあって、そんな簡単じゃないでしょ?
なんて思いながら見ていました。
でも、そこはコメディなので、よいかなとも思いました。