実の母の顔を知りたいという先輩の願いが、遂にかないました。


先輩がまだ自宅に居られたときに、先輩のお母さんの話をしてくれました。

先輩がまだ小さい頃に亡くなって、実のお母さんの記憶が全くないとのことでした。
そのためか、先輩は次のお母さんに馴染み、本当の母親のように慕っていたとのことでした。
良い母だったそうです。
でも、お兄さんたちは違って、やっぱり2番目の母ということで、少し気を使っていたそうです。

先輩が大きくなって、自分には実の母がいることを知ったそうです。
それで、家族に実の母がどんな人が聞いたそうですが、家族は誰も教えてくれなかったそうです。
どんな顔だったか写真を見たいと言っても、一枚もないと言って見せてもらえなかったそうです。

たぶん、育ての親に気を使って実の母の写真を全部捨ててしまったのだろうとのことでした。
私は実の母の顔を知らないのが心残りだと話してくれました。


ホスピスに入って、私たちが会いに行くと、「引き出しを開けて写真を見てごらん。」と言いました。
そこには古い結婚式の写真がありました。色あせてセピア色でした。
美男美女が写っていました。
「私の実の母の写真だよ。やっと母の顔がわかったんだよ。」
「母をいっぱい撫でてあげたんだ。」
と言いました。


まるで女優みたいにきれいな人でした。
先輩もとても整った顔なのですが、親譲りなのかなと納得しました。


先輩のお兄さんがつい先日亡くなったそうです。
もちろんお葬式には出られなかったそうです。
そして姪が遺品を整理していて、その写真を見つけたのだそうです。
そうして、病院に届けてくれたのだそうです。

「やっと、母の顔がわかったんだよ。これが私の母だよ。」
と、とてもうれしそうでした。

たぶんお兄さんはお母さんの写真を持っているのに、ないと言って弟(先輩)には見せなかったんだと思います。
どうしてなのか、私にはお兄さんの思いはわかりません。でも弟を思ってのことだったんだと思います。


私は、すごく嬉しかったです。
先輩が実の母の顔を知らないし何の記憶もないのを、とても悔やんでいたからです。
先輩が生きているうちに、この写真が届いて本当によかった。
あ~。偶然だけでなく何か運命のようなものを感じました。


「この写真は、私の棺に入れてもらうつもりだよ。残しても困るだろうからね。」
そういっていました。


お母さんに感謝!



「幸せ」与 勇輝さんのお人形 スケッチより
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